短編:恋の残り香
その日は、健司に告白された日に似た寒い一日だった。

健司に呼び出された時、美加は拭いきれない不安を隠しきれなかった。

二人で行った、思い出が詰まっているコーヒーショップ。

一番奥の席に健司は座っていた。

美加が来た事にも気付かず、青白い顔をしていた。


「…健司?」


声をかけられてようやく美加に気付いたが、その顔には笑顔はなかった。

重苦しい沈黙が包む。

先に口を開いたのは美加だった。

大して面白くもない話をベラベラ話す。

健司は小さく笑顔を作ったが、その笑顔は悲しいものだった。


「…美加、別れよう」


振り絞るように健司が口を開いた。

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