短編:恋の残り香
美加も健司を追い掛け、縋り付いた。


「嫌だよ、別れたくないよ!」


健司は回された美加の腕を歯を食いしばって振りほどいた。

血が出る気がした。

心がガシャガシャと音を立てながら崩れて行く。

離したくない

誰にも渡したくない

抱きしめてどこかへ逃げてしまいたい

愛してる、愛してる、愛してる…


心が悲鳴を上げながら叫び続けている。

それを振り切るように健司は美加を残し走り去った。

美加は泣きながらその背中を見つめる事しか出来なかった。

健司に振りほどかれた腕が凍り付いたように痛い。


好きなのに…

こんなに好きなのに

好きだけじゃ駄目なの?

何で何で何で…


気が遠くなっていく。

ガラガラと音を立てて目の前が崩れていく…


目を覚ました時、心配そうな両親の顔が見え、美加は両親の前で声を上げて泣いた。
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