短編:恋の残り香
想いを抱いて…
別れてから一年半が経つ。

健司は職場もアパートも変え、どこにいるのかさえ分からなくなった。

美加はしばらくの間屍の様になっていたが、周囲の優しい励ましに少しずつ元気を取り戻していった。

しかし、健司への想いは消える事なく今でも残り続けている。

健司に似た姿を見るとつい追い掛けてしまう。

健司がつけていたコロンの香りに胸が張り裂けそうになる。

何を見ても健司につながる。


「美加、帰ってきなさい。
そこにいても辛いだけでしょう?」


母親が見兼ねてそう言ってくれたが、しばらくはこの街を離れられずにいた。

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