短編:恋の残り香

出会い

二人の出会いは六年前に遡る。

高校二年の春。

クラス替えでたまたま隣になった。

当時の美加は大人しく、人と話すのも関わるのも苦手な女の子だった。

一方健司は派手な外見で言動は軽く、ちゃらちゃらした雰囲気だった。

ぶすっとふて腐れた顔をして椅子にだらしなく座る健司を見て、美加は


『絶対に関わりたくない』


と思った。

健司も健司で、怯えたように自分を見る、どことなく暗い印象の美加を


『つまんなそうな女』


と思っていた。

互いに隣同士で座りながらも会話もなく一学期は過ぎていった。

二学期に席替えが行われ、互いに


『やっと離れられる』


とホッとしたのもつかの間、くじ引きでまたしても隣同士の席になった。


「またあんたと一緒になったなー」


その時初めて健司は美加に声をかけた。

美加は相変わらず怯えたような表情で健司を見ていたので、思わず


「俺ってそんなに怖い?」


と尋ね、俯く美加を見て笑ってしまった。

笑われた美加は気分を害していたのだが、反撃する勇気はなく


『やっぱり苦手だ』


と思っていた。
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