君がいて、僕がいる。
「……嘘じゃないよ。
俺はそんだけ荒れてた。毎日のように補導もされてたし
……パクられるのも時間の問題だなって思ってた。
っていうか、そんなことすら怖くなかった。
俺は常にトップで、誰にもなめられたくなんかなくてさ
だから俺、まわりにどんどん人を増やしていった。仲間、というより手下。
俺をでかく見せるための演出にすぎなかったんだよ。
その中に、将希もいたんだよ。
俺が声をかけて、うまいこと俺の手下にした。……仲間じゃなくて」
圭介の話す内容がどれもこれもが真実味がない。現実味がない。……だから、これが圭介の話だとは思えなくて
たんたんと話す圭介に、私もたんたんと聞いていた。
これは誰か知らない人の話
圭介が作り上げた物語
そんな風にしか聞こえなかった。
「中学生なのにケンカ強くて、仲間思いで
話しかけたら素直にいいやつで、……俺の手下にはちょうどいいなってさ。
それからの将希は俺に従順だった。
俺が親父狩るとき見張りもやってたし、俺の身代わりに警察にパクられた時もあったしな」
「え…?」
その言葉だけは、私の心へ届いた。見に覚えがある。
去年、初めて将希が警察の厄介になったとき
……確か、なにかをお店から盗んだって
まさに、家が荒れ出した原因とも言える、あの出来事…
『…本当は俺がやったわけじゃねぇのに』
そうやって、部屋で小さくなってる将希を、私は覚えてる。
「中学生だから、まだ許されるって身代わりにした。
……最低だろ?俺。
それでも、将希は俺についてきた。どこまでも俺を信じてた。
たぶん、俺が身代わりにしたってまだ気づいてねぇんじゃねぇかな
知ってたら、俺なんかとっくに嫌いになってるだろうし」
「……違う」
「え?」
「嘘、つかないでよ。
圭介はそんな人じゃないじゃん。将希だって圭介のこと悪く言ったこと一度もないんだよ?
今の話が本当なら、どうして将希は圭介のこと憧れてたりするの
意味わかんないよ」
……ねぇ?全部嘘なんでしょ?
「私のことが嫌になったって言いにくくてそんな嘘つくの?
嫌いになったならそういえばいいじゃん。そんな作り話、しなくていいよ」
笑ながらそんなことを圭介に伝える。……そのつもりだったのに
自分でもわかる、ぎこちない笑顔。
そしてカタカタを震える声に、溢れ出しそうな泪。
圭介の話が嘘にも聞こえるのに、辻褄が合う将希の変化、過去。
嘘だ、嘘だ。信じるもんか。
そんなことを頭では思ってるのに……私の心は、揺れまくる
「……嘘じゃ、ないよ」