君がいて、僕がいる。
ガンガンと揺れる頭に、また圭介の言葉が私の頭を突き刺す。
その痛みがどんどん強くなって、私の体がカタカタと震えるのがわかるくらい…
「真希のこと嫌いになったって嘘つけたら、どんだけ楽だったのかな」
「……え?」
さっきまで下に落ちてきた言葉
それがなんだか上に向いた気がして、いつのまにか下がっていた視線を上に戻せば、圭介は儚げな笑顔のまま空を見上げていた。
「そんな嘘がつけたら、俺はこんなこと真希に話す必要、なかったんだけどな」
そういうと今度は、私の目を見つめた。
やっと、圭介が私のことを見た気がした。
「真希のことを嫌いになったなんて、嘘でも言いたくなかった」
真顔で、私にそう伝える。
ちゃんと私に向けられた言葉に、私の泪をどんどん溢れそうになっていく。
「……だから、本当のことを話そうって決めた。
ずっと内緒にしたかったけど、それでも嘘をつくよりは辛くないかなって
…あの頃は、誰かになんでも押し付けて俺だけが楽しい思いしてたけど…まさか、こんなところでツケが回ってくるなんてな
……こんな俺のせいで真希に辛い思いさせてごめん
真希を巻き込んでごめん
でも、どうしても黙ってるなんてできなかったから。
俺のせいで、真希にも将希にも迷惑かけてごめん
俺さえいなければ、真希も生きるの諦めなくてすんだのにな」
いつの間にか溢れ出る泪。
いったいなんでどうして流れているのか…そんな理由すらわからない。
圭介にフラれたから?
圭介の過去が衝撃だったから?
……ううん、きっと
将希の痛みと悔しさを知っているから
圭介の痛みが伝わってくるから
…だからこそ、私の心が痛むから
私の知ってる圭介は優しくてさっぱりしてて、能天気だけど
……でも、将希の姉として
将希が苦しんだあの出来事をなかったことにもできなくて
そのことで泣いた母親の顔や、怒った父親の顔も忘れられなくて
……それから荒れていった日々も決して忘れられなくて
圭介のことがすきなのに
それを許して一緒にいるという決断が、私にはできなかった。
それをしてしまったら、私の家族を裏切ることになる気がして…
「……わかったよ」
あんな家族でも、どうしても私は捨てることはできない。
やっぱり大好きだから。
あんな家族でも、私には大事な家族だから
知ってしまったら、圭介と一緒にいるってことは私にはできなかった。
「圭介の彼女、やめることにする」
なんとなく始まった恋愛だった。
とくに理由もなく、なんとなく始めた圭介との恋愛。
…でも、こんなどうしようもない私たちにも
終わるときには立派な理由ができる。
こんな私に、そんな幸せを教えてくれた。
こんな幸せがあるんだって知れた。
それだけでも、今までの時間は無駄じゃなかったよね…?