君がいて、僕がいる。
__カシャン、
流れそうになった泪を堪えようと下向いた瞬間、そんな音がここに響いて、その音を追えば
圭介の足元に、ナイフが落ちていた。
「……圭介っ、」
思わず顔をあげれば、歪んだ顔に、細まった目。
その目は赤く濡れていて
私はもっと、手を伸ばす。
「……私の願いこと、知りたい?」
今にもなにかが流れそうな目が少し開く。
そして、震える口が少しだけ上がった。
「…なに?」
「……”圭介を幸せにしたい”」
圭介にとって、なにが幸せなのかなんて、私にはわからない。
でも、そんなことはこれから見つけていけばいいから。
「…幸せそうに笑う圭介が見たい。
たとえそこに私がいなくても、きっと私は笑えるから」
圭介を好きな私でいたい。
いつでも、圭介の幸せを願う私でありたい。
この恋が叶うことがなくても、きっと圭介は私の忘れられない人になるから。
「真希……」
「帰ろ?圭介」
私がそういうと、圭介は差し出す私の手に向かって手を伸ばした。
「…どうでもいいけどさ」
その手が私に触れる、その瞬間
嫌な声が、圭介の後ろでした。
「俺は、お前が嫌いで仕方ないんだわ」
その瞬間、伸ばされた圭介の手によって突き飛ばされて、優斗くんの腕に包まれた。
「神谷さんっ…!!」
咄嗟のことで意味不明なこの状況。
後ろで将希のでかい声が聞こえて
「神谷!!」
私の上から、優斗くんの大きな声までもが聞こえてきて
私は、ゆっくりと後ろを振り返った。
「あの女が死んだとき、俺はお前のせいで警察に何時間も拘束されたんだからな。
あの女が勝手に死んだだけだろ。俺まで巻き込んでんじゃねぇよ」
私の後ろでは、将希が私の後ろにぴったりとついていて、優斗くんも私を離そうとはしていない。
将希がいてよく見えないけど…でも、なぜか赤く染まった服を脱ぎ捨てた熊谷が私の横を通りすぎていった。
「神谷さんっ!!」
「神谷!!」
あの男がここから出ていった瞬間、優斗くんは私を離して将希の方へと向かう。
「けい、すけ…?」
状況が、つかめない…
優斗くんは、わからないけどどこかに電話をしてる。
将希は、なんか服を脱いで圭介に押し付けてる。
「なに、してんの…」
そして圭介は、なぜか赤く染まって横になってる。
制服をきているから、シャツは白いはずなのになぜか今は真っ赤だ。
「……圭介、そんなとこで寝てたら汚いよ」
声が、震える……
なに、私泣きそうになってんの
はは、足にも力が入らないよ
たつこともできない…
「…圭介、起きなよ」
「…木村さん、真希を外に…」
「圭介、起きてよっ」
「真希!!!」
ふらふらとした頭が、将希の声でハッとする。
……でも、やっぱりこの状況は夢なんかではなくて、さっきと同じ光景が繰り広げられている。