君がいて、僕がいる。



「ま、なにより
自分の人生は自分で掴んでいかなきゃね。
その方が、たぶん流れ星にお願い言うより簡単だよ、きっと。
流れ星が消えない間に3回お願い事を言うなんて、俺には無理だもん」


・・・確かに。
普通に考えて、私にも無理。

一瞬だし、っていうか私流れ星すらみたことないし…


「でも、そういうジンクスが嫌いじゃないけどね。
夢があって」


夢、ね。
でもなんか、『流れ星に3回お願い事を言えたなら、絶対願い事が叶うよ。
絶対ね。』


そういった圭介の言葉が私は忘れられなくて、ジンクスなんてもので片付けたくはなかった。


「・・・あ。」

「え?」


優斗くんがなにか見つけたのか?一点を見つめて歩くのをやめた。
だから私も自然と前を見てみるわけだけど


「…なんでもないよ。行こ」


前には誰もいなくて、でも優斗くんの体はなぜかここを曲がろうとしている。


「え、いや家向こうですけど」

「そっち工事してるよ」

「え?でも朝はなにもしてなかったし…ってかなぜにそれを優斗くんが知ってるの?」


謎だ。圭介と同じ中学なら家はこちら方面ではないはず。
なのにどうして優斗くんがそんなことを知っているのは不思議で仕方なくて……
なにか私がそちらを通ってはいけないわけでもあるんじゃないか?なんて思えてきて


「行こ」


私はそのまままっすぐ歩き始めた。


「え、ちょっ…」

「こっちの方が近いし、もうすぐそこだから」


こっちになにかある?
見てはいけないもの?でも逆に気になるよ……


「もう、わがままだなあ」

「え、それを優斗くんが言うの?
私の家こっちなのに?」


なんて笑いながら通るこの道。
そういえば、この道を誰かと歩くのって初めてだな。

圭介とすらない、この道。


「真希ちゃんってさ、神谷の事好き?」

「それを圭介の彼女である私にするってすごい話だよね」

「あはは、本当だよね。
でもなんか、神谷は予想通りだったけど、それを真希ちゃんが受け入れたのがなんか不思議で」

「私は圭介の事を好きにならなそうってこと?」

「っていうか、恋愛とかに興味なさそう。
そういう低次元で生きていませんっていうか」

「いやいや、全然その次元で生きてますよ
私も、人並みに恋愛したいんだけど」

「人並みでいいの?」

「え、だめなの?」

「いや、そうじゃなくて
神谷を彼氏にしたら、きっと人並み以上なものが待ってるよ」


は?え、どういう意味?と首をかしげて優斗くんをみると優斗くんはこちらを見て優しく微笑んでいて、その顔が適当にそんなことを言ってるようにも見えないし、嘘をついてるようにも見えないし
っていうか、この人絶対嘘とか下手だし

まぁ今はこの人を信じてもいいのかもと思ったその瞬間


優斗くんの向こう側にある公園に、なんだか見たことある人が、一人。


「……あれ、圭介?」

「えっ…?」


じゃっかん戸惑う優斗くんの声。
でも、なんで戸惑っているのか私にはわかる。

だって、圭介が向こうで知らない女の人を抱き締めていいるから。

抱き締めている?いや、抱き合っている。


彼女の私でもまだ未経験なことを、他の女にもしている。


そんな事実がどれだけ人の心をえぐるだろうか。



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