君がいて、僕がいる。
「……なるほど、優斗くんは知っていたのか」
優斗くんは知っていて、この道を避けようとしたのか。
私に見せまい、と。
……でも、それってどうなの?
こういうことは私は知らない方がよかったの?
いや、絶対に知っておくべき事実だ。
こんなことを知らずにのほほんと彼女なんかやってられるかって。
「…先、帰るね」
そういって私は走った。
このくそ暑い中。全力で走った。
「真希ちゃん!」
そんな優斗くんの声を背中にぶつけて。
だって…まさかこんなにショックを受けるとは思わなかったから。
圭介のことが好きか?自覚なんてないからわからない。
だけど、ああいう特別な行為を特別であるはずの私にはせず、他の女にしている
そんな事実を目の当たりにして、心をえぐられて、涙まで流れてきそうなのを我慢してる私は
絶対に、間違いなく
圭介が、好きだ。
誰よりも、圭介が好きだ。
そんな自分の気持ちを自覚してしまったら、あんな光景を見ることすらできず、逃げることしかできなかった。
圭介がこちらに気づいていなければきっとなかったことにできる。
なかったことにして、これからも普通に過ごせばいいんだ。
……でも私は忘れることができる?
あの人を抱き締めて、彼女である私にはしていない。
どうして私じゃないの?なんて
そんな滑稽な質問、恥ずかしくてできないけど……
「逃げんなよ……」
でも、走る私を一人の男が止める。
確かにこの腕が体温を感じて、引き留められた。
「えっ、圭介…なんで…?」
なぜだか、ここに圭介がいる。
さっきまで女の人を抱き締めていた圭介が今ここにいる。
……そう考えたら無性に胸がえぐられて
____その手で私を触らないで
そんなことを思ってしまった私は掴まれた腕を振りほどいた。
いつから、私はこんなにも圭介に惹かれていたんだろう……
ずっと気づけずにいたのか、気づかずにいたのか……
そんなことすら私にはわからないけど
「ちょっ…「帰るところだから」
今は、圭介のそばにいたくなかった。
圭介を見ることも嫌だった。
あの人は元カノなのか?いや、他の彼女なのか?
そんなこと、私には関係のないことで知りたくもなくて
相手が誰だろうが、彼女として
見たくないものを見てしまった私は圭介のそばにはいたくなかった。