君がいて、僕がいる。
第3章

先輩の彼女。




「……じゃあ歩きながらになるけど」


そういって、圭介は踵を返して歩き出した。
私は、横にならんでいいのかわからず、後ろをついていくことにした。


「俺、前に彼女いたでしょ。
さっきの子は元カノの妹」

「……妹?」


なんでまた妹と……


「俺の妹が自殺したっていったでしょ?
そんで家族も。

その後、去年の冬に俺の彼女も自殺してるんだよね」


圭介がたんたんと話すことがあまりにも衝撃的で、私の足は一瞬止まった。

……でも、すぐ近くにあったお寺に圭介が入っていったのを見て、私も走って追いかけた。


「今日でお盆も最後で、今年が初盆になるから今日は俺の家族とその彼女の墓参りに行ってたんだ」


そういって歩き進めた先にある『佐脇家之墓』


「ここ。ここが彼女の眠る墓。
今日、墓参りにきたらたまたまさっきの妹に会って…妹はまだ精神的にかなり辛そうだったから、家まで送ろうと思って…
で、さっきのがその道中。
思い出して泣き崩れたから。」

「えっ!え、じゃあ送り届けなくてよかったの…?
私なんか追いかけてきてる場合じゃないじゃん!」

「……木村がいたから頼んだ。それに、自分の彼女が走って逃げてるとこ見たら普通追いかけるだろ」


そういう圭介の顔は本当に辛そうで

圭介なりに私を大切にしてくれてたんだなって伝わってくる。


「……あの、その彼女がどうして自殺したかって理由は聞いちゃダメなのかな」

「ごめん、それは言えない。
…きっと、彼女も言わないでほしいだろうから」


……だけど、やっぱり私は所詮2番目に代わりはなくて

結局私は2番目でしかなくて


「……そっか。それじゃ仕方ないよね」


どう頑張ったって、一番にはなれなくて……


「もう、帰るね」


私はもう、前に進まなければならない。


「え、ちょ待って」


圭介がそうやって追いかけてくるけど、私の足は止まることなくお寺を出た。


「待てって!もう暗くなるし、送るから」

「はは、冗談やめてよ。
私、もう圭介の彼女じゃないんだよ」

「でももう女一人で出歩くのは危ないだろ」


あんなさっぱりとしている圭介がめずらしく感情的にそんなことを言ってきて驚くけど、私はもう圭介のそばにはいたくないんだ。

これ以上、傷つきたくないんだ。


「……前はそんなことしなかったじゃん。
付き合う前は、私を送ってくことなんかなかったじゃん。
だからやめてよ。前に、戻るんでしょ?」


私がそういっても


「でも……」


圭介はなかなか引こうとはしなかった。


「あれ、真希?」


でも、そんな時に私に救い船、現れる。


「将希…」


可愛い可愛い…いや、全然可愛くない弟の登場だ。


「え、神谷さん!?」

「…やっぱり将希、知り合いなんだ?」

「知り合いもなにも、神谷さんは「将希!」


将希がなにか言う、そんなとき
これまためずらしく大きな声を出した圭介。

でも、その声に将希はしゃべるのをやめた。


「……将希、帰るよ」

「え、あぁ…
ってかもしかして噂の彼氏って、神谷さんなわけ?」


そんなことを聞いてくる頃には私の足は自宅へと向いていて将希も圭介に頭を下げて私についてきた。


「……そんなわけないでしょ。ただの学校の先輩。」


これも、私なりのケジメ。
明日にはなにもなかったかのように、前に戻ってやる。


「そうだよなー。神谷さん、まだアユさんのこと忘れられてないもんな。」

「…アユさん?」

「神谷さんの彼女だよ、知らねぇのかよ」


……ふぅん、彼女、な…



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