君がいて、僕がいる。



「……私、誰とも付き合ったことなくて圭介が初めてだからさ
これからいっぱい教えてよ。
ちゃんとした恋愛。」

「……ちゃんとした恋愛?」

「付き合ってる人たちはどういうところに行くのかとか、どういうことをするのか。
どういうことを共有していくのか、どういうことで喧嘩するのか。
いろんなこと。」


ただ両思いな私たちが恋人同士になる。
そんな当たり前なことを経験した。

だから、これからもいろんなことを知りたい。
……圭介と一緒に。


「……ん、わかった」

「とりあえず、ご飯はつくってあげたじゃん?
今日はほかになにする?」

「んー、今日は夜一緒に流星群を見るし、それまでおうちでまったりデートかな」

「いやそれ前もしたけど」

「出掛けたいの?家にいた方がくっつけるよ?」

「……じゃあ家にいる。涼しいし」

「そうそう。家にいよ。」


じゃあとりあえず…と私は卒アルに手を伸ばした。


「え、それはもういいんだけど」

「え、なんで?見せてよ」

「やだ。真希が嫉妬してくれないから」

「いやそれどんな理由なの。
それに、卒アルって嫉妬するものでもないでしょ?二人で撮ったプライベートな写真ならまだしも…」


卒アルじゃあね…と思ってそんなことを言うと、圭介はなにかを思い出して立ち上がった。
……かと思えば、今度は普通のアルバムを持ってきた。


「これなら嫉妬する?」


……てことは、これは彼女、アユさんとの写真か。
そんなものをまだ大切にとってあるなんて、ね。


「…見てほしいの?」

「見てほしいっていうか嫉妬してほしい」

「そんなん言われると意地でも嫉妬したくなくなる」


そういってアルバムを受け取って躊躇することなくなかを見た。


「…こういう写真はいったい誰がとるの?」

「ケータイのタイマー」


1ページ目からがっつりラブシーン。
圭介が肩抱いて引き寄せていたり、頬にキスしていたり、普通にキスしてたり。
背景は見たことないところ…たぶん、圭介が家族ですんでいたところかな……

ページをめくっても、どれもこれもが圭介のベタ惚れ具合がわかる写真ばかり。


私はまったく見たことがない顔をしている。
本当に幸せそうで、アユさんが好きだって伝わってくる。

そこに映る圭介が本当に私といるときとは別人で


「どう?妬ける?」

「だから妬けないってば」


はっきり言って、同一人物には見えなかった。

この人はこんなにも愛情を全面に出せる人。
でも今は…全てを内側に秘めていて、外見からではなにもわからない。

さっきみたいに苦しそうな時にしかわからない。


嫉妬しようにも、こうも違うと嫉妬なんかできない。
私なんか眼中にないんだなって、思い知らされる。
所詮2番目ということがまた鮮明にわかっただけだった。


「なんだよー、どうしたら嫉妬するんだよ」

「……だから、私はこういう生き物なんだってば」

「俺ばっか嫉妬してて不公平」

「知らないよ」


所詮2番目

その言葉に傷つく私もいるけど、たったそれだけで自分の事を守れる言葉でもある。
だから…今はまだこの言葉にしがみつきたい。
2番目なんだから、こんなもんなんだって…


私にもいつか、そんな顔を見せてくれる?
いつか、本当の圭介を見ることができるのかな…?


「ねぇ、真希の前好きだったやつはどんなやつ?」

「……圭介は嫉妬するんだからそういうこと聞かない方がいいんじゃない?」

「いやでも知っときたい!」

「えー、どんなんって言われても…
普通に、勉強もそこそこできるし、運動もできるし、かっこよくて、優しくて……みたいな。
優斗くんから誠実さをとったような感じかな?簡単にいえば」


私がそう説明すると、圭介はまた明らか不機嫌。
だから聞かなきゃいいのに…


「……木村から誠実さをとった感じ、ね…」

「女は結局かっこよくて優しい男に弱いってやつ」

「ふーん」


…なんだよー、めっちゃ機嫌悪くなってんじゃん。
圭介だって優しくてかっこいいんだから別にいいじゃん。タイプ通りだよ。


「…やっぱ、今度から木村と二人になるの禁止ね」

「・・・は!?」

「真希が木村のこと好きになったら困るから」

「え、いやそれはないと思うんだけど」

「だって木村みたいのがタイプなんでしょ?好きなんでしょ?」

「…いや、今は圭介のこと好きなんだからそれはないって」


私がそういうと圭介は一瞬固まった。で、こちらを見た。
どうした?とも思ったけど、やっと私は気づいた。


『圭介のこと好き』


・・・。

・・・・・なに私、いきなりコクってんだ!?
いやまぁ事実だし、前にちゃんと伝えてあるけど……

なんで改めてそんなこと言ってんだ!?


「……真希、顔赤いよー」

「う、うるさいよ!笑うな、バカ!」


謎にめっちゃあせる私を見て笑う圭介。
そんな圭介にもムカつくけど、どうして私は急にそんなことをいってしまったんだ!!という焦りからあたふたしてる、けど


「幸せ感じて笑うのは普通でしょ?」


その言葉に、私の動きは止まる。


「……幸せ?」

「そりゃ好きな女に好きだって言われたら幸せでしょ?
……真希は違う?」

「……ううん、私も幸せ」

「なら一緒だ。」


そういって、私たちは笑いあった。


数分前から考えていた『私が幸せにしたい』。

それは、彼女の私にはとても容易なことだったみたいで……


こんな幸せを感じられるなら、こんな関係も悪くないなと思えてきた。

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