人魚の住む海
私は一之瀬くんが泳いでいるところをどうしても見たくて放課後、離れの室内プールに来てみた。

部活を見学したいと中にいた顧問の先生に声をかけて入れてもらう。

「女子は人数が集まらなくて男子水泳部しかないんだよね」

「そうですか。ザンネンです」

入る気はさらさらなかったからほっとしつつも一応そう答えた。

「でもせっかくだから見ていけば？中には国体にでる選手もいるし」

顧問の先生がそう言ってくれたのでお言葉に甘えることにする。

ちょうど一ノ瀬くんが飛び込み台に立ってるところが見えた。

いるかみたいに綺麗な弧を描いて水に沈んでいったかと思えば、完璧なストロークであっというまに泳いでいく。

～ボクが泳げるようになったら人魚に世界に連れてってくれる？～

王子の言葉を思い出す。

約束守れなくてごめんね・・・

心の中でそっとあやまった。
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表紙・目次

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