人魚の住む海
屋上は結構にぎわってたけど隅っこがちょうど開いていたので2人で隣あって腰をかけた。

「なんかさぁ。湊の弁当っていっつもなんかしら魚が入ってるよな。普通は肉とかじゃない?」

タケルが私の弁当を覗き込んだ。

「うん。私ずっと海のそばに住んでたから、昔から魚が主食みたいなもんなんだ」

もぐもぐ口を動かしながら話す。

「へぇ。そうだったんだ。知らなかった。」

タケルが少し驚いた顔をした。

「海って言えばさ・・・ひかないでもらいたいんだけど」

ふとまじめな顔になる。

「オレさ。人魚に会ったことがある気がするんだ」

「え?」

唐突なタケルの言葉にドキリとした。

「沙紀がさ。前にオレが子供の頃溺れた話をしただろ。オレその前後数日の記憶があいまいでさ。多分夢なんだとは思うけど妙にリアルなところがあって」

何の相槌も打てなくなり私は黙ってタケルの話を聞く。

「人魚の顔も覚えてないんだけどすごく頭に残ってるのが、泳ぎがうまくなったら人魚の世界に連れて行ってくれるって約束してくれたことと、オレが溺れたときに助けてくれて『もう大丈夫だからね』って声をかけてもらったこと」

心臓がバクバクといっていた。それって・・・その人魚は・・・
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