人魚の住む海
電車とバスを乗り継いで3時間ほどの海辺の町に着いた。

生まれ育った海が眼下に見え、私は懐かしさに目頭がツーンとなった。
やっぱり私はこの海が好きだ。

タケルの別荘はバス停からすぐのところにあった。

三角屋根のおしゃれな洋館といったところ。

「すげー。ホテルみたい！部屋数やたら多くね？」

中に入って希美とジュンが手をつないではしゃいでる。

「ああ、お客さんをたくさん呼ぶことが多くてゲストルームがたくさんあるんだ。シングルもツインもあるから」

タケルが答える。

「私たちツインでいいからね～」

希美とジュンがねーっ！と顔を見合わせてうれしそう。

「じゃあ、沙紀とタケルもツインにすりゃいいじゃん。私はシングル借りるから」

話の流れで私はそう言った。「えっ？」沙紀の顔がぱっと明るくなる。

「いや、オレ自分の部屋あるし。1人じゃないと眠れないから」

タケルがつっけんどんに言い放つ。

「湊と沙紀でツインつかえば？」

「じゃあアタシ、シングルでいい！」

沙紀が大きな声をあげる。

そして私に

「湊と一緒の部屋になりたかったけど今回はどっちの部屋でフラグたつかわからないからね。アタシあきらめないから」

とこっそり言った。沙紀はいじらしいくらいに本気だった。
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表紙・目次

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