人魚の住む海
「タケルちょっと沙紀に冷たくね?」

タケルに書いてもらったスーパーへの地図を片手にジュンが言った。

「付き合ってるなら一緒の部屋が普通だと思うけど」

夜は浜辺でバーベーキューをすることになり私と希美とジュンが買出しに向かっている。

タケルと沙紀は準備係。

「まぁタケルが無愛想なのはいつものことだけど、最近ちょっとね・・・ね?」

希美はそう言って意味深な笑みで私を見た。

「え?何?」

急に話をふられて焦る。

「昔から沙紀が一方的にベタベタしてはいたけど、タケルはわりとそれを受け入れてたところあったんだよね。でもさ・・・」

希美が神妙に語る。

「なんだか最近極端に沙紀と2人きりになるの避けてる気がする。学校帰りも部活の仲間と一緒に帰るってことが多いみたいだし」

「へーお前よく見てんなぁ」

ジュンが感心してる。

「まあね。沙紀もだからあせってるんじゃない?」

そう言って希美がまた私に意味深な笑みを浮かべる。

「ま、面白くなりそうだから私は傍観してるだけだけどー。ねー湊」

「ちょっと希美なに言ってんの?私は別に・・・」

私は動揺してしどろもどろになる。

「湊はどうかしらないけど、私はタケルは湊を多少は意識してる・・・と思う」

希美が真剣な顔で私を見つめた。

100歩譲ってそうだったとしても私にはどうしようもない。沙紀を裏切れないし、それに
私のせいでタケルは・・・

私はどう答えていいのかわからずただうつむいた。
< 23 / 43 >

この作品をシェア

pagetop