人魚の住む海
「湊ぉ~」

沙紀がヒシッと抱きついてきた。

「どうしたの?まあ入りなよ」

沙紀を部屋に招き入れる。イスが1つしかないので2人でベットに腰掛けた。

「さっきね。タケルの部屋に行ったの。そしたらさ。眠いからまた明日って。無理やり入ってやろうとしたら部屋鍵かけちゃってるの。どうして?私そんなに魅力ないのかな・・・」

沙紀がベソベソと泣く。

「沙紀・・・。タケルほんとに疲れてただけだって。今日は移動時間も長かったしさ。いくら私たちでも自分の別荘にお客を呼んで意外と気も使っただろうし」

「そうかな・・・」

「きっとそうだよ」

沙紀を慰める。沙紀は手で涙をぬぐった。

「湊さ・・・お願いあるんだけど」

「なに?」

「タケルに聞いてみて。どうして私に手だしてくれないのか。自分じゃ恥ずかしくて聞けないし」

「ええっ?」

そんなこと私だって恥ずかしくて聞けないんですけど。

「さりげなくでいいからさ」

さりげなくと言われてもどうすれば・・・

「お願いっ!お願いっ!」

沙紀の真剣なまなざしを見たら私はうなずくより他はなかった。
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