人魚の住む海
砂浜に敷いたシートの上でぼーっと横になってさっきのことを考えていた。

あれは私だったからじゃない。あれは事故だ。たとえば相手が希美だったとしてもタケルは同じように怒って同じことをしたかもしれない。

自分にそう必死で言い聞かせる。

でも・・・それでも私はいやじゃなかったんだ・・・

「タケルとなんかあった？」

一通り泳いだ希美がそばに来て声をかけてくる。私ははっと我に返った。

「え？別に何もないけど・・・」

「なんかさっきから妙にぼーっとしてさ」

希美がニヤッと笑った。

「え？そっそんなことないよ」

必死で否定する。

「まぁいいけど。こりゃ本格的に面白くなってきたかもね・・・」

希美は独り言のように言った。

じゃまた泳いでくると希美はまた海に入っていき、入れ替わりに沙紀がそばに来る。

「湊・・・ごめんね。ヘンなこと頼んで」

「私のほうこそ役に立てなくてごめん。さっきさタケル怒らせちゃって・・・」

沙紀は手をぶんぶんと横に振った。

「ううん。さっきね。アタシもタケルに怒られちゃった。湊を困らせるなって・・・」

「そう・・・」

「アタシなんか空回りしてるよね・・・」

沙紀は海の遠くを見てそうつぶやいた。
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表紙・目次

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