人魚の住む海
「タケルー!湊ー!」

沙紀たち3人が手を振って私たちの方に走ってきている。

「溺れてたコ助けたんだって?朝からたいへんだったね・・・」

希美とジュンがねぎらってくれた。

「タケルも湊もなんともなくてよかったよぉ」

沙紀が泣きそうになってる。

タケルはあぁとだけ返事をして黙ったままだ。

「もうすぐリムジンくる時間だけどどうする?2人とも疲れてるだろうしキャンセルにする?」

ジュンが言う。

「いや。もう来るのにキャンセルなんてできないよ。お前たち先に言ってて。オレと湊も着替えて少し休んでからタクシーで追いかけるから」

タケルが答えていた。そんなやり取りをしてる間にリムジンが別荘に向かってるのが見えた。

あわててみんなで別荘にかけ戻る。

戻るとすでにリムジンが玄関前についていた。

「じゃあアタシもタケルたちと後で行くからとりあえず希美たち2人で行ってきなよぉ」

と沙紀。

「ダメ!沙紀がいたら休めるものも休めない。それにタケルもすぐに追いかけるって言ってるじゃん。私たちと一緒に行くの!」

希美の強い説得に沙紀は渋々オッケーしていた。

「じゃあ早く来てね」

沙紀はタケルと私に声をかけた。希美に体を押されて無理やりリムジンに乗らされてる。

希美は私にしか聞こえないように耳元で

「私どっちの味方ってわけじゃないけど2人きりの時間は平等にあげないとね」

そう言ってまた意味深に笑い私の肩をポンッと叩いてリムジンに乗り込んだ。

私はその場にタケルと2人だけになった。
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