人魚の住む海
「どうして言ってくれなかった?」

タケルが静かに聞いてくる。

「・・・わけない・・・」

声がうまく出せない。

「ん?」タケルが私を見てる。

私は大きく息を吸う。

「言えるわけがない!私のせいでタケル死にかけたんだよ?タケルはあのときの私にとっては王子様だったの。初めて会ったときにそう思った。それなのに私が、私があんな適当なこと言ったせいでタケルは・・・」

一気に感情があふれ出す。涙がボロボロと流れてきた。

「何言ってる?お前のせいじゃないだろ・・・」

「私のせいだよ!死ななかったからよかったとかそんな問題じゃない!私がタケルのこと殺しかけた事実は消えない!そんな私はほんとはタケルのそばになんていちゃいけなかった。でも・・・」

涙のせいでうまく息ができない。また大きく息を吸う。

「沙紀とタケルを応援すれば少なくとも友達としてそばにいられるって思ってた。私は沙紀のことも好きだったから。タケルが私とのことちゃんと覚えててくれたからそれでいいって」

本当は苦しかった。私は苦しかったんだ・・・

そのとき・・・体が強い力でベットに押し付けられた。
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