人魚の住む海
「まあね」

私は照れてそっけなく答える。

「ボクはタケル。あそこから来たんだ。キミはなんて言うの?どこから来てるの?」

高台の別荘地方面を指差して王子は言った。

私の家はここから目と鼻の先のボロボロの集合住宅だ。恥ずかしくてとてもじゃないけど言えない・・・

「私人魚だから名前は秘密。家は海の底」

とっさにでまかせのウソをつく。王子は目を丸くしていた。

「え?人魚?だって普通に足あるじゃん」

「人間の前で魚の尻尾は見せちゃいけないから魔法使ってるの」

また適当なウソをつく。王子はますます目を丸くする。

「そうか!すげー!どうりで泳ぐのうまいと思ったよ!」

王子は目をキラキラさせて私を見つめる。どうやら本気で信じてしまったらしい。
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