人魚の住む海
沙紀はいつものようにマックシェイクを頼んでいた。私はアイスティだったし何もかもが以前と同じ気がする。でもそれは表面上だけで・・・

「沙紀・・・私・・・」

なんと切り出していいのかわからなかったけど私はとりあえず何かを伝えようと口を開いた。

「ねぇ。湊」

沙紀が私の言葉にかぶせるように話す。

「アタシさ、ほんとは知ってた。タケルが私のこと最初からなんとも思ってなかったこと。アタシに負い目があるから付き合ってくれてただけだって。小さい頃浜辺で倒れてるタケルをアタシが見つけて・・・そのことでタケルのこと縛ってた・・・」

沙紀がマックシェイクのストローをぐるぐる回しながら話す。

「そばにいればいつかは振り向いてくれるって思ってた。アタシには一番長い時間タケルのそばにいたっていう自信があった。幼馴染ってだけでバリバリ恋愛フラグだって思ってたし。でも・・・」

沙紀が私を見る。

「そばにいればいいってもんじゃなかった。アタシは最後までタケルの心の中に入れなくて長い間ずっとただウロウロしてただけで、いつの間にかタケルの心の中には湊がいて・・・アタシいつかはこんな日が来るんじゃないかって覚悟はしてたんだよ」

「沙紀・・・」

沙紀は泣いてはいなかった。ずいぶんと泣きはらした目はしていたけど。

「いつか他の誰かに取られるって覚悟してたから。それが湊でよかった。他の女の子じゃ納得できないって暴れるけどそれが湊だから。アタシ許せる気がした」
< 41 / 43 >

この作品をシェア

pagetop