ひみつのナナくん
それから跳ねた私の後ろ髪を「急ぎすぎだよー」と言いつつ素早く櫛でとかしてくれる。
「いつも迷惑かけてごめんね」
「これくらいどうってことないよー」
いっちゃんは最後の手直しをしてからニコッと笑顔を見せた。
いっちゃんこと、片桐 一夏(いちか)は覚えていないほど小さい頃からの幼なじみで、誰にも変え難い頼れる親友。
明るくてしっかり者で芯も強くて、昔からクラスのムードメーカーみたいな存在のいっちゃんは、優しく、人見知りの私を助けてくれた。
「あっ、バス来たみたい」
そう言ったいっちゃんの声に我に返ると手に持っていた端末を仕舞う。
それからリュックを背負ってベンチから立ち上がった。
早く行こうと急かすいっちゃんの背中を追いかけて私はバスに乗りこんだ。