ひみつのナナくん
目の前には…
「っ…!」
私より30cm…いや、40cmくらい大きな男の子が立っていた。
逆光で顔が見えないけれど、たしかに今私を助けてくれた人だってわかる。
「怪我…ない?」
「ご、ごめっ…なさい!」
優しくかけられたはずの言葉も怖く感じて、謝罪の言葉の後、一も二もなく私はその場から抜け出した。
(ありがとうございますって、怪我はないですって、言わなきゃいけないのに…)
自分の不甲斐なさに、意気地無い態度に泣きそうになる。
ごめんなさい、ごめんなさいと心の中で唱えて、振り返ることもなく一目散に人混みの切れ目へと足を進めた。