羊と虎
後少しでも遅かったら、確実に手を上げていた。
「大丈夫か?」
「はい。」
凱の顔を見て返事をしたが、何か違和感を感じる。
『なんだろう?何時もと違う?』
この前の鈴木では無いが、違和感の理由がはっきり分からなかった。
「待たせて悪かった」
「いえ、でも珍しいですね。凱が時間ギリギリに来られるなんて」
ロータリーの中心にある時計は待ち合わせの時間より少し過ぎていた。
「ちょっと寝坊して」
『あぁ、そう言われてみれば、疲れた顔してる・・・前あった時より』
会議室であった時も少し疲れているように見えたが、今は更に疲れたように見える。
「大丈夫ですか?仕事忙しいんでしたら、食事はまたにして、ゆっくり休まれた方がいいですよ」
「いや、大丈夫だ」
そう言って駅構内に入っていくので、慌てて後を追った。