羊と虎

課に戻り、設定の報告をした後、今日の業務内容を見直して、手早くこなしていく。

途中やはり、飛び込みの呼び出しが入り、業務を中断する事もあったが、何とか昼休みを返上して待ち合わせ前に仕事を終わらせた。

「お先に失礼します」

同僚も上司もまだ仕事をしている中帰るのは気が引けたが、それよりも重要な任務の為だと言い聞かせ退社した。

『こんな所に来た事なかったけど、凄い車が並んでる!』

地下駐車場は、役職のある者のみ使用可能なので、一社員が来る所では無かった。

駐車されている車は国産にしろ、外国産にしろ高級車ばかりでため息が漏れた。

一台一台見てまわりたい衝動に駆られたが、防犯カメラが死角無しに備え付けてあるので、ぐっと我慢をした。

『どこで待つのが正解?』

19時にはまだ10分程時間が早いので、待たなければならないが、いつ重役と鉢合わせるかもしれないと思うと隠れたい気分だった。

キョロキョロと辺りを見回していると、エレベーターの稼動音が聞こえてきた。

『ヤバい、誰か来る!』
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