羊と虎
凱を背後に庇い、男たちと対峙したが、杏奈の顔を見た男共はイラついた顔から一変、ニヤつきだした。
「あんたの連れか・・・。こんなボーっとしたヤツ放っておいて俺たちと遊ぼうぜ」
「彼は具合が悪いんです。見て分からないんですか?」
早く凱をタクシーに乗せたくて焦ってしまい、つい口調がキツクなる。
「なんだと!」
前にいた男が、怒鳴りながら杏奈の胸倉を掴んできた。
「!!」
胸倉を掴む男の手を上からギュッと包み込むように握り、相手の拳を自分に密着させたかと思うと、全身を使い相手の体の外側に向けてお辞儀をするように状態を倒した。
すると、相手はバランスを崩して仰向けに倒れた。
「!?・・・いってぇ」
一瞬息が詰まったように顔を顰めた後、呟くように言う男に見向きもせず、男の後ろの二人を睨んだ。
「これ以上邪魔するようなら、容赦しないから」