羊と虎

少し郊外にある、駐車場完備の本屋に着いた。

開放的なガラス張りの建物の前はウッドデッキのカフェテラスになっていて、お茶を飲みながら本を読んでいる人や、本を片手にタブレットを操作している人など様々だった。

「よく来るの?」

「ここはちょっと遠いから、滅多に来ないんだけど車で来るならお勧めかな」

そう言って店内に入った杏奈は、探している本のコーナーへ凱を案内してから、自分の本のコーナーへ行った。

お互いに思っていた本を手にしてカフェでお茶にする。

ケーキセットは杏奈に、ブラックコーヒーは凱にと、店員が自分たちが注文したものとは逆に置いて行く。

店員が去った後、顔を見合わせてクスリと笑ってから交換した。

「もう慣れたね」

杏奈の言葉に笑いながら頷く凱を見ていると、周りの視線が気になった。

『みんな凱の笑顔を盗み見してるな』
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