羊と虎
「しつこく無くて良かったね」
カフェのテーブルは隣との距離を開けてあり、観葉植物で軽く目隠しされている。
なので、二人の会話は周りには聞こえていないだろうが、声を潜めてそう言った。
見た目だけで凱に声をかけてきたのだろう。
回りも先程のやり取りを興味津々で眺めていたし、今もチラチラとこちらを伺っている。
「うん」
凱も声を潜めてはいるが、口調はオフモードに変っていた。
ホッとしてコーヒーを一口飲もうとしたが、空になっていた事に気付く。
「凱、コーヒー頼む?それともそろそろ出る?」
気付けば昼を過ぎて4時になろうとしていた。
時計を一瞥した凱が、「出ようか」と言ったので、プログラムの本だけ購入して店を出た。