羊と虎

「女性が嫌い・・じゃ無かったよな?」

珍しく歯切れが悪い。

顔つきも何処か不安そうに見える。

「嫌いじゃないけど・・仕事中は仕事に専念したいし、ストレスがかかるから困る」

「じゃぁ社交の場に出るんだな」

露骨に嫌そうな顔をする凱。

「あぁいう所が苦手だって、兄さん知ってるだろ」

「じゃぁ何処で知り合うんだ?」

「今は・・仕事をするだけで精一杯・・・だよ」

歯切れの悪い凱の表情をジッと見つめてくる慧に居心地が悪い。

秘書が、結婚相手を兼ねている事は知っていた、その秘書を断るのだから別の提案をされる事も分かっていたが、どの提案も受け入れたくなかった。

仕事でなら、上手く対応出来るのに、素の自分だと何故か上手く行かない。

気まずい沈黙が続き、視線を彷徨わせて居ると、とんでもない言葉が耳に入って来た。

「誰か、気になる女性(ひと)でも居るのか?」

「!」
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