羊と虎

「最近頑張ってるな」

不意に声を掛けられてふり替えると鈴木が立っていた。

「そうですか?」

自分ではあまり意識していなかったので不思議そうに見上げる。

「あぁ、何か良い事あったのか?」

「良い事?」

考えてみるが、特に思い当たらない。

「私生活が充実してるんじゃないのか?楽しそうな顔してるし」

「え?!楽しそうな顔・・してますか?」

私生活の充実と言われて思い当たった。

今まで、週末は一人で過ごす事が多かったし、猫を被っている所為で友人と言える者は居なかったが、今は週末に凱に会うのが楽しみになっていた。

「成る程・・・。充実してますね」

振返って感心したように頷く杏奈に、鈴木が噴出した。
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