羊と虎
「人に言われるまで気付かないって・・・大丈夫か?」
哀れむような眼差しを向けられて、苦笑してしまう。
『ホントだ。言われるまで気付かないって』
凱と過ごす事が、いつの間にか当たり前になっていた。
私生活が充実すれば、仕事へのやる気も向上するようで、先日凱と一緒に行った書店で購入した、プログラムの本で新たな言語の勉強を始めていた。
「まぁ分からない事があったら、気軽に聞いてくれ。今なら手が空いているから」
そう言って席に戻る鈴木を眺めて考える。
今まで以上に毎日が楽しいのは、凱がありのままの自分を受け入れてくれるからだ。
そのお陰で、ストレスも無く、いや逆に癒されている。
そんな事を考えていると、スマホにメッセージを受信した事を知らせるランプが点滅した。