羊と虎
珍しく待ち合わせ場所が、会社から離れた大きな通りから少し入った所だった。
『珍しいなぁ』
ウッドデッキが店の横にあり、今の季節ウッドデッキで食事する人も多い。
店内も満員とまでは行かないが、客が多く賑わっていた。
予約してあると言っていたので、予約者の名前を告げて席に案内して貰う。
凱はまだ来ておらず、待っている間に店内をグルリと見回した。
客層は20代後半から40代前半位で、女性客の方が多かった。
『凱・・・浮くんじゃないかな』
店内はクラッシックが流れて客同士の声ははっきりと聞こえないが、仕切りが無いから客同士の顔は見える。
ただ、席は壁際になっていたので、自分が壁を背に座れば顔を見られる事は少なくなる。
指定した凱の意図が分からずあれこれ考えていると、凱が来た。
「ごめん。遅くなった」