羊と虎
それから毎日、凱と夕食を共にして、色々な機種の操作方法や設定方法などを説明した。
最初の日で懲りたので、もう少し格式ばらない店を頼んだお陰で、あの日のような緊張は無かった。
5日やって分かった事だが、凱は思いの他飲み込みが良く、それなりに使えるようになっていた。
もう会って教える事はないと判断した杏奈は、金曜日の勉強会の後、勉強会の終了を切り出した。
「凱も5日間で大体使えるようになったので、勉強会はひとまずこれで終了します」
帰りの車の中で唐突に切り出された内容に、凱の目が軽く見開かれた。
「え、・・まだ分からない事だらけなんだが」
少し困ったような顔をする凱。
「あ、ただ、一人で使ってみないと実際分からない事って多いので、何か分からない事があったら連絡して貰えば、教えます。」
慌てて言葉を付け足す。
「そうか・・。なら・・大丈夫だな」
車内が一時居心地が悪くなったが、杏奈の言葉で元に戻る。
『良かった。きまづい雰囲気にならなくて・・でも、焦った顔ちょっと可愛かったな』
少し困った顔の凱を思い出し、口元に笑みが浮かんだ杏奈だが、慌てて表情を戻す。
『こんなにカッコいい人捕まえて、可愛いわ無いでしょ。大丈夫か私?』