羊と虎
息を呑むほどほど完璧な姿に鼓動が弾む。
「・・とても綺麗だ」
何時も仕事用の凱は完璧だと思っていたが、今日は更に凄く王者の風格が漂っている。
金縛りにでもあったかのように、息も出来ずにその姿に見入っていた杏奈が、凱の声で我に返った。
『落ち着け、凱は友達、凱は友達』
心の中で何度も繰り返し、気持ちを切り替える。
「ありがとう。凱も素敵ね」
周りの目がある事も思い出し、渾身の笑顔で凱を迎える。
「お二人とも、とてもお似合いですよ」
店員の方を見ると、明らかに凱を見て話している。
『そりゃそうだよね。いつも以上にカッコいいよ』
目にハートが見えそうな程、熱い視線を凱に送っているが、凱は全く気付いていないようで、わき目も振らずに杏奈のところにやって来た。