羊と虎
「いつも綺麗だけど今日は一段と綺麗だ」
完璧なエスコートを受け、会場に向うが、緊張はドンドンと高まって行く。
『大丈夫かな・・・試合より緊張するかも』
車の中から過ぎ行く景色を見るとも無しに、眺めながら色々考えてしまい、気付けば到着間近だった。
「ちょっとした・・って言ったよね?」
目の前に聳え立つ、誰でも一度は聞いた事が有るだろう有名なホテルを見上げながら、恨めしそうに呟いた。
「規模は小さいよ」
にこやかに、話す口調から、本当にそう思っている事が伺える。
『庶民から見た小ささではないのよね。このセレブめ』
心の中で悪態をついて、軽くため息一つしてから歩き出す。