羊と虎

「!!」

「やはりな、足を痛めているのか?」

身動きが取れないように腰に手を廻され、密着された。

「!・・そんな・・事は っ!」

否定しようと口を開きかけた時、腰に回された手を緩められて体勢が崩れた。

「やはり足か」

痛みに顔を歪めているのを見て、確信したようだ。

秘密を暴かれた事と、酷い痛みの所為で、何時のような余裕が無くなり、引き攣った顔で慧を見つめる。

「兄さん!」

焦った顔の凱が二人の傍に駆け寄って来た。

回りも二人のただならぬ雰囲気に注目していた。

緊迫した空気の中、顔だけ凱の方に向けた慧は余裕の笑顔だ。
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