羊と虎
「ごめん・・なさい」
消え入りそうな声で謝ると、表情を緩める凱。
「怒ってる訳じゃないんだ。心配してるだけだから」
何も言えずに、ただ頷く。
「じゃぁ今度は、呼びに来るまでベッドから動かないでね」
念を押すように言うと、寝室を出て行ってしまった。
『ただでさえ忙しい筈なのに、思いっきり迷惑かけてるよね』
自分の不甲斐なさに自己嫌悪に陥る。
『やっぱり家に送って貰えば良かった・・・』
そうすれば、凱は自分の布団でゆっくり眠り、疲れが取れたはずだ。
先程見た凱の顔は、疲れが滲み出ていた。