羊と虎

「杏奈。お風呂沸いたよ」

明るい笑顔で寝室に入って来た凱のお陰で、段々と沈みかけていた気分が浮上する。

風呂は浴槽に入ると、一人で出られないからと断り、シャワーを浴びて出てきた。

風呂に入る前に置いてくれた椅子を使って、用意された着脱しやすいワンピースを着終った頃、廊下から「入っても良い?」と言う声が聞こえて驚いた。

「え!?・・・いい・・けど」

断ろうかと思ったが、凱にとって自分は友達なのだから、恥ずかしがっていても仕方ないと諦め、「どうぞ」と答えた。

「髪を洗おうと思って」

「え?いいよ、さっき洗ったから」

そう言いながらタオルで無造作に髪をガシガシと拭いている杏奈に驚いた顔をしていた。

「髪が痛むよ」

「あぁ、気にしてないから良いよ」
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