羊と虎

日曜日の夜には自宅に戻るつもりだったのに、心配だからと押し切られ、結局そのまま居座る事になった。

出社するのにも、電車では危ないからと、凱の車で近くまで送って貰う。

『凱だって忙しいのに・・私、迷惑ばっかりかけてるなぁ』

ココのところ、ため息が癖になりつつある杏奈は、重い足取りで会社にたどり着く。

スカートしか穿けなくて、ギプスが目立ってみんなの注目の的になってしまう。

声を掛けられるたびに理由を説明していると、始業時間ギリギリになってしまった。




「「おい!どうしたんだソレ?」」

ようやくたどり着いた自席に座ろうとした時、ギプスに気付いた鈴木と山葉が同時に口を開いた。

「ちょっとドジって捻挫しました」

散々聞かれた質問に対する理由を二人にも説明する。

「うわぁー痛そうだな」

「これじゃぁメンテナンスは当分無理だな」

「暫くご迷惑をおかけします」

申し訳なさそうに謝ると二人とも嫌な顔一つしなかった。

「まぁ、そんなにメンテ入らねーし大丈夫だろ」
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