羊と虎

持っていたジョッキのビールを一気に喉の奥に流し込み、ドンっという音を立ててジョッキをテーブルに置くと、二人に向き合い口を開く。

「私、実は我侭だったんです!」

そんな開口一番の台詞に二人とも面食らっていたが、何も言わずに聞いてくれた。

「友達だと思ってた人を無意識に好きになって、でもその人は私の事友達だと思ってて、それで・・・」

ポツリポツリと話す杏奈を急かせる訳でもなく、黙々と食べて呑んでしながら話を聞いてくれるふたり。

「諦めようと思ってたんですけど、やっぱり諦められなくて・・・
でも、私女として見られてないみたいで」

話してみるととても短い話である事に気付いた。

そして話してみるとやっぱり無理なんじゃないかとも思えて来て、落ち込みそうになったので、またビールを一息に煽った。
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