羊と虎
「おい、もう、やめとけって」
酒に弱いと自己申告していた筈の本人が、もうジョッキ3杯目だ。
しかも、目はトロンとしてヘラヘラ笑っている所を見ると、完全に酔っ払っている。
「えぇ~まらダイジョブ・・っすよぉ~」
♪♪♪ 着信音が聞こえて来た。
「あれぇ?ダレかぁ電話なっれますろぉ~」
楽しそうに音の出所を探し始めるが、二人は杏奈の鞄から聞こえている事を知っている。
「アイツ、ヤバイな」
「あぁ、もう会計して、送り届けないと家の住所言えなくなるぞ」
二人がコソコソと話をしている間に、自分の鞄から着信音が聞こえる事にようやく気付き、スマホを取り出した。
「はぃ・・もしもしぃ。・・・げ、凱だ」
そう言った通話を終了させる。