羊と虎

「おい、良いのか、切って」

「いいのいいのぉ」

そう言って笑っているが、座っているのに身体がユラユラ揺れている。

そのまま椅子から転げ落ちそうになった所を鈴木が抱きとめる。

その間も新たな着信が来ている。

「はい、こちら小鳥遊の携帯です」

そう言って、山葉が勝手に電話に出ると、電話口から男性の低い声が聞こえて来た。

「杏奈は?」

「あぁ、小鳥遊はちょっと・・・電話に出られないので」

「今何処にいる?迎えに行くから場所を教えてくれ」

威圧的な声が電話の向こうから聞こえて来て、山葉は怖いと無意識に思った。

『まさか、さっきの話の相手じゃないよな・・・』

あまりの威圧感に、居酒屋の場所と名前を伝えたる。

「直ぐに向う」

そう言って一方的に電話を切られた。
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