羊と虎
「そうだぞ、好きな事を仕事に出来る人間は本当に少ない。
まぁ好きな事を仕事にする事で苦労する事もあるがな」
父蔵人(くろうど)が母に続いてそう話すと、怜苑もそれ以上言わなかった。
「僕は今が丁度いい。
会社勤めも楽しいし、週末の稽古も楽しいからね」
紫苑は髪こそ黒いが、彫が深く、細身ながらもしっかりとした筋肉が付いていて、背も180cmを超えている。
王子様のようなイケメンだが、中身は毒舌家だ。
怜苑は髪の色や、目の色は父と同じだが、顔の作りは母似で可愛らしい。
毎日鍛えているので、紫苑よりも筋肉が多く、背は紫苑よりも10cm程低めだが、人懐っこさから、わんこキャラとしてこちらも良くモテているようだ。
杏奈は久しぶりに目一杯稽古をしたのでお腹が減って、母の作ってくれた好物の筑前煮やから揚げを片っ端から口に放り込んでいた。