羊と虎
『何者だ?』
電話を返そうと杏奈の方を見ると鈴木にもたれ掛かって今にも眠りそうだった。
「会計済ませて来るから、小鳥遊連れて外に出といて」
鈴木が頷くのを見て、鈴木と杏奈の鞄を持って、会計に向う。
山葉の後ろを通り過ぎる時、「やだなぁ。ダイジョブれすよぉ」と言う杏奈の声が聞こえて来て、思わずため息が出た。
店を出ると店内の喧騒が小さく聞こえる程度で静かなものだった。
先に出た二人を探すと、植え込みに座って電柱にもたれ掛かった杏奈と、店の横にある自販機で水を買っている鈴木の姿があった。
「ほら、飲んで」
キャップを外した状態で鈴木が水を差し出す。