羊と虎

水を零しながらゴクゴクと豪快に飲む杏奈を呆れたように眺めていた鈴木が口を開く。

「で、電話の主は何て?」

「あぁ、迎えに来るらしい」

「それって、さっきの話に出て来たヤツ?」

「どうかな・・・ただ、凄く威圧的だった」

「彼氏・・だったら嫌だな」

「さっきの話では彼氏は居ないだろ」

ワザとらしく震えてみせる鈴木に冷たい視線を送る。

「杏奈」

その声に杏奈が反射的に立ち上がってしまい、倒れそうになったので、鈴木が抱きとめる。

「神宮寺取締役・・・」

杏奈に気を取られていた鈴木とは違い、声のする方を見た山葉がそう口にした。
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