羊と虎

「え?」

驚いている二人を気にも留めずに、近づいてくる。

「帰るぞ」

「やだ。凱とは帰らない!」

二人は親しい仲なのは、話し方から理解できたが、何処で知り合ったのかが分からない。

「二人に迷惑がかかっているだろ」

杏奈と1mと離れていない所まで近づき、ため息混じりにそういう。

「やーだ、絶対凱と一緒には帰らない!」

凱の態度にカチンときたらしく、挑発的な態度をとる。

鈴木に支えられてやっと立っているとは思えない。

「杏奈」

嗜めるような響きにビクリと身を震わせ、先程の威勢は何処かへ行ってしまい悔しそうに唇を噛む。

「だって!・・・だって凱は私の事何とも思ってないでしょ!
何とも思ってないのに優しくしないで・・・」

今にも泣きそうな顔で、今まで溜め込んで来た気持ちをぶちまける。
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