羊と虎
「何とも思っていない分け無いだろ!」
杏奈の挑発に凱も声を荒げたが、怯むどころか更に大きな声で反論する。
その二人のやり取りを鈴木も山葉も口出し出来ずに、ただ見守るしかなかった。
「でも、女として見てないでしょ!
凱に女として見られてないのが辛いよ」
鈴木に支えられながら、ポロポロと涙を流し始める杏奈の腕を強引に引っ張り、自分の胸に閉じ込める。
「誰が見ていないだって!
ふざけるな、どれだけ我慢してると思ってる!」
そして、杏奈の顔を自分の方に向けさせたかと思うと、噛み付くようなキスをした。
「っ!?・・・ふ・・ぁ」
最初は驚いていた杏奈も、段々と下を絡める濃厚なキスに変ると、蕩けるような顔になる。
「悪い、迷惑をかけた」
見ている二人の方が恥ずかしくなる位の、キスシーンの後にも関わらず、何事も無かったかのような態度でそう言うと、キスの所為で立っていられなくなった杏奈を軽々と抱き上げその場を後にする。