羊と虎
「二度目は流石に不味いと思って、俺が出た」
苦笑交じりに話す山葉をすまなさそうに見た。
『あ、穴があったら入りたい』
「それで、迎えに行くから店の名前と場所を教えろと、高圧的に言われて答えた」
「あの時の取締役なら、俺でも答えるな」
当時を思い出して首を竦める鈴木を見て、不安になってきた。
「それで?」
「外に出て取締役を待つ間に、小鳥遊に水を飲ませてたんだけど、酷い飲み方だったなぁ」
「結構零してたからスーツがびしょ濡れだったな」
大げさにため息をつく鈴木に続き、山葉も苦笑しながら付け加える。
「・・・・」
相槌も打てなくなって、蒼白な顔で続きを待つ。