羊と虎

「凱が本社に移動になる・・とかでしょうか?」

「それがお前にとって大事なことなのか?」

そう言われるとそこまででは無いと思う。

じゃぁ何が大事かと言われても、咄嗟に何も出てこない。

黙っていたら、慧が口を開いた。

「日曜日の予定は知っているか?」

「え?・・・用事が有る・・・って!?」

言葉の途中で息を呑んだ。

この前感じた違和感と慧の言葉で繋がったのだ。

「やっと気付いたのか」

「うそ・・凱、誰かと付き合うんですか?」

「付き合う?」

「え?だって、明日の用事言葉を濁してたし、副社長からの電話の内容も明日女性と会うって事を伝えてくれてるんでしょ?」

「はっ!めでたいヤツだな。」

電話の向こうの慧が鼻で笑ったのがわかる。
< 295 / 320 >

この作品をシェア

pagetop