羊と虎
「凱が誰かと付き合うより、もっと大事な事があるだろう」
「・・・・!?えぇぇぇ!!もしかして結婚の話!?」
思わず大きな声を出してしまい、慧に「煩い」と言われた。
「明日、見合いをするが、形式的なもので結婚は確定している」
「うそ・・・でも、凱・・何も話してくれなかった」
「友人に話す必要も無いだろ」
自分の言った言葉に、今になってショックを受ける。
『そうだ、私、凱の事、友達だって言ってた
だから・・凱もそれ以上踏み込めなかったの?』
「友人として応援に行ってやったらどうだ」
「応・・援・・」
力なくオウム返しに繰り返す杏奈に、凱は時間と場所を伝えて電話を切った。
放心状態のまま暫く電話を見つめていた。